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はいくはかくかいしかくあじわう
俳句はかく解しかく味う
高浜 虚子
「俳句は斯く解し斯く味ふ」新潮社、1918(大正7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,016 字 · 144 页
何も女の罪深い事は髪のみに原因しているのではないが、唯この場合に触目すると同時に、「女は罪深いものである」という言葉があるのを思い出し、「髪に罪深し」といったのである。これを普通の文章のように、「髪を見るにつけても罪深い事がわかる」と延べていったら、たるんでしまって俳句にならぬ。たとえ少々言葉に無理があろうとも、調を整えて言葉を出来るだけ省略していったところに面白味があるのである。さてこの趣向はどうであるか。前にもいった如く、いかにも卑近な我らが日常よく目に触れている平凡な事実である。蕪村であったら、たとい目にとめても棄てて顧みぬ事実である。その蕪村が「草の戸によき蚊帳たるゝ法師かな」とか「蚊帳釣って翠微作らん家の内」とか、かように飛び離れた趣向を案じている間に、太祇は目前の卑近な事実を捕えてこの句を作っている。卑近な事実を捕えて作ったのではあるが、その句柄はどうかというに、「罪深し」などいう語を巧みに斡旋し、言葉に屈折をつけ、調子をひきしめて卑俗ならざる句にしている。尤も蕪村召波などの句のように品格のよい句ではない。しかしてこんな趣向をこれ位までにこぎつけて、さほど下卑た句にせぬところは太祇の手腕を認めねばならぬ。