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はいくはかくかいしかくあじわう

俳句はかく解しかく味う

高浜 虚子

「俳句は斯く解し斯く味ふ」新潮社、1918(大正7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,016 字 · 144 页

青空文庫

なまじい際立った御馳走などをしては、どうもいつもと違うた御馳走を今夜に限ってするのは、少し変だなと万事に警戒している落武者の事であるから、忽ち気取られることもないとはいえんのであるが、同じ馳走をするのにも、新蕎麦を打ったからというて蕎麦を勧めるという事は無造作であって、しかも親しみのある馳走ぶりであって、それで酒でも勧めて義朝に油断をさすとしては、いかにも事実ありそうに思われる事柄である。季節に頓着なしに感じの上から、新蕎麦を持って来たところが詠史の句としては取柄である。俳句の詠史は漢詩や和歌などと違うてその事柄を優美にしたり、荘重にしたりすることはしないで、むしろその事柄と反対に卑近な物を持って来たり、滑稽な物を持って来たりして頓挫を与えるものが多い。この句などもその一例で、長田忠致が源の義朝を弑したというような事柄は歴史の中でも悲壮な事柄であって、もしこれを漢詩にでもすれば堂々たる文字で、英雄の末路を弔するのであるが、それが俳句になると極めて卑近な新蕎麦というようなものを持って来て、長田が義朝を弑す前の晩には新蕎麦を御馳走して一杯飲ましたのだそうだ、はあはあ、なるほど新蕎麦で一杯やったのか、などと話すとすると、その悲壮な事実に頓挫を与えて其処に一種の軽味が生ずるようになって来る。