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はいくじょうのきょうとえど

俳句上の京と江戸

正岡 子規

「種ふくべ」1900(明治33)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,442 字 · 15 页

青空文庫

しかしそれでも江戸には『五色墨』だの何だのと多少の俳人はありました。談林も振わぬながらに少しはやっていたようですが、京の方にはさっぱり善いも悪いも俳人がないです。あるといえば僅に移竹がある位だ。そういう訳ですから、貞徳時代に京が全勝を占めたと反対に、享保時代は江戸が全勝を占めています。

第五は天明時代です。これも明和から寛政頃までを含んでおるのですが、この時代は元禄時代と共に俳句の最隆盛を極めた時ですから、両都共に、名人も沢山出る、名句も沢山出る、書籍も沢山出る、という訳で、その勢は非常な者でありました。けれども勝はいうまでもなく京にあります。何しろ蕪村という怪物が京に出たのですから、啻に当時の天下を動かしたばかりでなく、古の俳風を一変して、明治の新俳風の種を蒔いて置いた位です。その怪力にかなう者は江戸にも地方にも固よりあるはずがない。その上にまだ太祇という名人も京にいたのですが、この者の力も非常な者であって、蕪村でもうっかりすると土俵から押し出されそうなのですから、江戸にも何処にも、蕪村の外に敵はありはしない。この二人があるさえ京に偏重して居るのに、まだこの外に几董も京にいた、これもやはり蕪村、太祇を除いたら敵はないのです。