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はいくじょうのきょうとえど

俳句上の京と江戸

正岡 子規

「種ふくべ」1900(明治33)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,442 字 · 15 页

青空文庫

しからばその京風と江戸風はどういう工合に違うかといいますると、京風はやわらかで、江戸風は強いです。京の句はうつくしくて、江戸の句は渋いです。京のは濃厚で、江戸のは淡泊です。京がおとなしくて、江戸は気が利いています。京はすらりとして居るが、江戸は曲りくねって居るです。これほど並べていうたならば、読者は、直に、そうか、と合点せらるるでありましょう。俳句上における京風と江戸風との比較は、風俗習慣性質における京風、江戸風の比較と少しも変った事はないのです。京言葉、江戸言葉の比較とも変りません。京の山水、江戸の山水の比較とも変りません。「阿呆言いなはれ」というは京の俳調であって、「何だ此畜生」というは江戸の俳調です。三十六峰が庭先や檐端にうねくっていて、嵐山が松と桜と楓と絵のように並んで居るのは京の俳想でありますが、武蔵野がただひろびろと広がっていて、ところどころに凹凸があって、富士と筑波が左右に見えるというのは江戸の俳想であります。公卿が衣冠をつけて牛車で参内するというのは、京の俳趣を現して居るが、大名が鳥毛の槍をふらせて駕籠で登城するというのは、江戸の俳趣を現して居るのです。