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こせい

個性

北大路 魯山人

「独歩」1953(昭和28)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,572 字 · 6 页

青空文庫

ある晴れた日の午後であった。と、こう書き出しても、芥川賞をもらうつもりで、文学的に書き出したのではないから心配しないでくれ給え。いったいこのごろは、何賞何々賞というものが多過ぎるようだ。常務取締役に社長が多すぎるのも気にかかる。知人に道ででも会って、久しぶりに会ったなつかしさかなんだか知らんが、きまって名刺を出される。例えばどんな若僧にもらっても、見給え、たいていは社長か常務取締役である。社長だからと思ってあわててはいけない。電話が一本に机一つ椅子一つ、社長一人の社長もあれば、銀行に知人があるというので、金を借りに行くだけの常務取締役だってある。何々賞もそれと似たようなもので、余り多過ぎはしないか。ひとをけなすよりほめる方が美しいことだし楽しいことには違いないが、賞めそこなったために、そのひとの前途をあやまらす結果にならぬともかぎらぬ。たまたま格のある何々賞があってそれを受けたと思ったら、棺桶に片足突っこんでいることの証明みたいなことになってしまったり……。

さて、なにをいおうと思っていたのかな。そうだ。ある晴れた日の午後であった……のつづきだ。