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ロンドンとう

倫敦塔

夏目 漱石

作者留学伦敦时只去过一次塔,之后再也不去。那段日子他像被扔到日本桥的兔子,靠地图和问路才能找到地方,每次都像冒险。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,166 字 · 33 页

青空文庫

「今一時間早かったら……。この三本のマッチが役に立たなかったのは実に残念である」と云う声さえ聞えた。自分ながら少々気が変だと思ってそこそこに塔を出る。塔橋を渡って後ろを顧みたら、北の国の例かこの日もいつのまにやら雨となっていた。糠粒を針の目からこぼすような細かいのが満都の紅塵と煤煙を溶かして濛々と天地を鎖す裏に地獄の影のようにぬっと見上げられたのは倫敦塔であった。

無我夢中に宿に着いて、主人に今日は塔を見物して来たと話したら、主人が鴉が五羽いたでしょうと云う。おやこの主人もあの女の親類かなと内心大に驚ろくと主人は笑いながら「あれは奉納の鴉です。昔しからあすこに飼っているので、一羽でも数が不足すると、すぐあとをこしらえます、それだからあの鴉はいつでも五羽に限っています」と手もなく説明するので、余の空想の一半は倫敦塔を見たその日のうちに打ち壊わされてしまった。余はまた主人に壁の題辞の事を話すと、主人は無造作に「ええあの落書ですか、つまらない事をしたもんで、せっかく奇麗な所を台なしにしてしまいましたねえ、なに罪人の落書だなんて当になったもんじゃありません、贋もだいぶありまさあね」