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ちゅうとう

偸盗

芥川 竜之介

独眼武士在酷暑街头拦住一个怪婆婆,追问昔日恋人“沙金”的下落。一次偷盗让他们的命运纠缠不休,真相却比天气更灼人。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,934 字 · 97 页

青空文庫

それも無理はない。おれの二十年の生涯は、沙金のあの目の中に宿っている。だから沙金を失うのは、今までのおれを失うのと、変わりはない。

沙金を失い、弟を失い、そうしてそれとともにおれ自身を失ってしまう。おれはすべてを失う時が来たのかもしれない。……)

そう思ううちに、彼は、もう猪熊のばばの家の、白い布をぶら下げた戸口へ来た。まだここまでも、死人のにおいは、伝わって来るが、戸口のかたわらに、暗い緑の葉をたれた枇杷があって、その影がわずかながら、涼しく窓に落ちている。この木の下を、この戸口へはいった事は、何度あるかわからない。が、これからは?

太郎は、急にある気づかれを感じて、一味の感傷にひたりながら、その目に涙をうかべて、そっと戸口へ立ちよった。すると、その時である。家の中から、たちまちけたたましい女の声が、猪熊の爺の声に交じって、彼の耳を貫ぬいた。沙金なら、捨ててはおけない。

彼は、入り口の布をあげて、うすぐらい家の中へ、せわしく一足ふみ入れた。

四

猪熊のばばに別れると、次郎は、重い心をいだきながら、立本寺の門の石段を、一つずつ数えるように上がって、そのところどころ剥落した朱塗りの丸柱の下へ来て、疲れたように腰をおろした。