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いつわりのないぶんかを

偽りのない文化を

宮本 百合子

「女性改造」1948(昭和23)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,161 字 · 18 页

青空文庫

一

きょう、わたしたち女性の生活に文化という言葉はどんなひびきをもってこだまするだろう。文化一般を考えようとしても、そこには非常に錯雑した現実がすぐ浮び上って来る。このごろの夏の雨にしめりつづけてたきつけにくい薪のこと、そのまきが乏しくて、買うに高いこと。干しものがかわかなくて、あした着て出るものに不自由しがちなこと。シャボンがまた高くなったこと。夏という日本の季節を爽快にすごすことも一つの文化だとすれば、多くの女性の生活には、文化らしいものさえもたらされていない。雑誌のモードは、山に海にと、闊達自由な服装の色どりをしめし、野外の風にふかれる肌の手入れを指導しているけれども、サンマー・タイムの四時から五時、ジープのかけすぎる交叉点を、信号につれて雑色の河のように家路に向って流れる無数の老若男女勤め人たちの汗ばんだ皮膚は、さっぱりお湯で行水をつかうことさえ不如意な雑居生活にたえている場合が多い。

その半面、このごろのわたしたちの生活は、決して戦争時分のように、どっちを向いても食べているのはおたがいに大豆ばかりという状態ではなくなっている。