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にせけいじ

偽刑事

川田 功

「新青年」1926(大正15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,368 字 · 15 页

青空文庫

「貴方に訊いて居るんじゃない。……君は一体何者だと云うんだ」巡査は二人にこう云った。

彼は女の後を跟けた時から彼女が知って居たのに驚かされた。自責と之れに依って起る恐怖とで全身がわなないた。慄え声で住所と姓名を辛うじて答えた。名刺も云われる儘に出して見せた。初め探偵と称した事の偽も、警視庁刑事と偽った事も女の云った通り白状した。叱られる儘に只平謝罪に謝罪った。彼は疾くに既うこうして謝罪りたかったのであったが、流石に女の前では出来難かった間に、ずんずんと女に引摺られて嘘許り云ったのであった。其処へ持って来て巡査は飽迄彼を追窮した。自分の罪を自覚し自責して居る彼は、彼女が云った様に停車場から女の後を跟けた事から白状した。白状しては叱られた。叱られる度毎に謝罪しては又白状した。

彼は彼女が半襟を袂へ抜取った様に見受けた事と、便所の中へ這入って包紙の中へ入れたらしい事とを語った時、女は横合から屡々口を出した。持って居る包みを開いて二人の前へ差し出した。包紙の下には一反の銘仙がある許りであった。其金の請求票も見せられた。袂の中に半襟が無い事も明白と成った。