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はたらくために
働くために
宮本 百合子
「婦人の生活」第二冊、生活社、1941(昭和16)年4月発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,590 字 · 8 页
男のひとたちにしろ、その時刻には窮屈な上着はぬいで部屋着にくつろぐのである。
一日のうちのこういう変化は、簡単であること、働きよいこと、金をかけないことと一致して、私たちの生活にもっととり入れられていいことだと思う。衣服にこういう変化を持てるということは、とりも直さず家庭での仕事、外での勤労が規則的に行われること、簡単に着換えられる衣類の形であること、生活の感情の多様さが活かされている社会の雰囲気であるということを語っていて、そこに簡単簡素ということは単調と同じものではないという事実がはっきり示されるわけである。
自分のことを考えてもつくづく思うのだけれども、日本の服装は実に閉口的に複雑であって、しかも単調だと思う。使わなければならない紐の数、小物の数、いかばかりだろう。その一つ一つに神経がいる。けれども、全体の形は少くともこれ迄は、働く時間の衣類の形もくつろぐ時、外出の時の衣服の形も同じで、動きを語る線の上でのくっきりとした変化というものは持たなかった。平常着を小ざっぱりと趣味をもって、ということは心がけのよい女性たちの念願だと思うが、日本のこれ迄の暮しの感情では、女のふだん着は働き着と同じ性能におかれていて、僅に夕飯後ふだん着の上に羽織られた袢纏が、日本女性のつつましい休息の姿を語っていた。