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はたらくために

働くために

宮本 百合子

「婦人の生活」第二冊、生活社、1941(昭和16)年4月発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,590 字 · 8 页

青空文庫

近頃のけばけばしさ、というと普通にはすぐ懐古風に配色だの縞だのが思い浮べられているけれども、そういう逆もどりも実際には不可能だと思う。

しぶい色、縞は、昔の日本の室内で近い目の前で見られるにふさわしいのだが、今日の東京の建築物では室内のスケールも変って来ていてその質量感にふさわしいようにという関心が、様々な色のこみすぎた盛り合わせとして現れて、却って色彩的でなくなってしまっている。二色或は三色きりの調和にある実にすがすがしい色彩感。単純な統一の一点に利いている小物の濃いゆたかな色彩、というような整理は、案外されていない。若い人は、雑多な色の間に自分の皮膚の若々しささえもみくしゃにされている。

日本の若い女のひとが、若さを衣服の赤勝ちな色でだけ示している習慣をよく気の毒にも粗野にも思って眺める。そういう色の溢れた中から、パッと鮮やかな若い眼や唇がとび込んで来ることは非常に稀である。燃えるような紅をもっとしまった効果で、小さく強く、その紅が青春のおどろきとして効果をあげるように使われたら、どんなに美しいだろう。洋装では灰色を瀟洒に着こなしている若い女性は、和服だとやっぱり平凡な赤勝ちに身をゆだねて、自身の近代の顔を殺しているのが今日である。