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ぼくはこれからだ

僕はこれからだ

小川 未明

「新児童文化 第3冊」1941(昭和16)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,555 字 · 17 页

青空文庫

そして、昼になれば、彼は、普通の子供たちなら、とうてい上がれない、目のまわりそうな高い建物の頂に立って、

「学校で勉強するよりか、こんなところで、大人といっしょに仕事をする己のほうが、よほど偉いんだぞ!」と、だれに向かっていうとなく、独りで豪語しました。

それは、彼が、東京へきてから、三たびめに迎える夏の暑い日のことでした。

緑の多い丘に建っていた教会堂の前を通りかかると、たくさん人が集まって、塔の上をながめていました。

「どうしたんですか。」

「あのたくさんなからすが、はとをねらっているのですよ。」

このごろ、どこのごみ捨て場をあさっても、あまり食い物が見つからないので、都会にすむ餓えたからすたちは、弱い鳥をいじめてその肉を食べることを考えついたのでした。それで、はとの巣を襲ったのです。いつ、どこから飛んできたのか、二羽のはとは、ここを安全な場所と思って、塔の屋根に巣を造りました。そして、やがて子供を産んで、育てていました。これを知っていて、からすは、いま計画的に、群れをなしてやってきたのです。早くも悟った親ばとは、巣の奥の方へ二羽の子ばとを隠して、母ばとは、胸で子供をおおい、たぶんそれは父ばとであったでしょう、いちばん端にうずくまって、体で巣の入り口をふさぐようにして、敵とにらみ合っていました。