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そう

僧

小川 未明

「新小説」1910(明治43)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,206 字 · 21 页

青空文庫

それを見詰めているうちにぐらぐらと眼が暈って来始めた。此処は河だと考えたが、急に畳の上にでも居るような弛んだ気持になって、その儘、倒れると水を呑んで悶掻たが、死んでしまった。

村人が、男を引上に行った時、草の繁っている蔭に、手足を縮めて、丸くなって、溺れている男を見た。顔は青白く、短かい髭が顎に生えている。生きている時と、色艶の悪いのには格別の変りがなかった。

それからというもの、この僧の来るたび毎に必ず村に人の死ぬことにきまっていた。

月日は水の流るる如く過ぎた。それも今では昔の話となった。この村にも幾たびか変遷があった。或年の大水に田畑が荒らされてから村を出て他に移った者が多い。或は、町へ出、或は他の村へ行った。

今は僅かに三軒の家がこの村に残っているばかりである。この村は、小さな村で一方は河に遮られ、往還から遠く隔っていて、暗い、淋しい、陰気な村である。古い大きな杉は村の周囲に繁っている。少し明るくなっている圃には、桑が一面に黒い、大きな掌のような葉を日に輝かしている。

三軒の家は、二軒は並んでこの桑圃の中に立っていた。一軒は暗い森の中に建っていた。