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あにとさかな

兄と魚

小川 未明

「こくみん三年生」1940(昭和15)年12月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,727 字 · 4 页

青空文庫

」と、兄さんは、底の方にかくれるようにしている魚をのぞきながらいいました。

正二は、自分たちのいった川は、いま冷たい水が、ゴウゴウと音をたてて流れているだろうと思うと、あとの二匹をその川へ逃がす気にもなれなかったのです。

「兄ちゃん、あとのは、かわいがってやろうよ。」

「ほかのいれものに移して、お家の中へおこうね。そうして春になったら、また、ここへ入れることにしよう。」

「ごはんつぶをやろうか。」

「冬は、あまりものを食べないものだ。それより、あたたかにしてやるほうがいいのだよ。」

正二は、兄が手に持っている魚をどうするだろうと思って見ていました。

「正ちゃん、手すきを持っておいで。」と、兄は、いいました。

正二がものおきから、手すきを取り出してくると、兄はつばきの下に穴を掘りました。

「ああ、ここへうめてやるのだな。」と、正二が見ていると、兄は、落ち葉を探してきました。正二は、なにをするのだろうと、黙って見ていると、穴の下へその枯れ葉をしきました。そして、死んだ魚をその葉の上へのせました。それからまた、枯れ葉をその上へしいて、土をかけたのであります。

終わりまで、黙って、これを見ていた正二は、やさしい兄の心持ちがよくわかりました。