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にゅうがくしけんぜんご
入学試験前後
宮本 百合子
「婦人界」1922(大正11)年3月号
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,225 字 · 5 页
皆の入ろうとする処が判ると、暗黙の競争が行われ始める。一日おき位に、放課後一時間か二時間いのこり、算術や国語の特別課業を受ける時も、一つの読み間違い、一つの式の立て違いが、何だか、みな遠い彼方で、入学試験の間違いと連絡していそうな気がする。
私は、他の多くの友達と一緒に受持の先生がいられなかったので、同じ、六年の男子の教室で、そこの先生に教った。算術の日、国語の日とちゃんぽんにある。自分には、算術が一向うまくない。前の方に坐っていて、黒板の前に呼び出されては大変だと思って、いつも後の窓際に小さくなって控えているけれども、国語の時となると、気ものうのうとし、楽しく、先生と睨み合うように意気込んで、二時間をすますのである。子供の自信や、無力でしょげた感じは、実に独特なものであると思う。自分が子供であるなどとはまるで思わず、まるで一人前で、心が明るくなったり、暗くなったりするのです。
算術では、血眼になっても程度が知れている。国語で一つの間違いでもすまい、というのが私の心算であった。父が、綺麗な西洋紙の、大きな帳面をくれたことがある。私はそれに赤や紺や紫や、買い集められただけの色インクで、びっしりと書取りをして行った。