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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

在线阅读国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 页

青空文庫

辻待ちの駕籠へポンと乗った。

「根岸まで急いでやってくれ」

「へい」と駕籠は駈け出した。

「よろしい」と云って駕籠を出た。

それからブラブラ歩いて行った。

内藤家のお下屋敷、それを廻って広場の方へ行った。広場の彼方に屋敷があった。帯刀様の屋敷であった。北山は地上へ眼を付けた。一筋引かれた白粉の痕は、もうどこにも見られなかった。その辺は綺麗に平されていた。格闘したらしい跡もなかった。血の零れたような跡もなかった。

「後片付けをしたそうな。これではたとえ格闘をしてもまた斬り合っても証拠は残らぬ……これはいよいよ心配だ」

北山は佇んで考えた。

「思い切って森家へ乗り込もうか、乗り込んで乗り込めないこともない。とにかく一度ではあったけれど、帯刀様にお呼ばれして、おうかがいしたこともあるものだからな」

だが表向き乗り込んだのでは、葉之助の消息を訊ねることが、不可能のように思われた。

「では乗り込んでも仕方がない」

彼は思案に余ってしまった。

「この方はもう少し考えることにしよう……もう一つの方を探って見よう」

浅草の方へ足を向けた。

奥山は例によって賑わっていた。

「八ヶ嶽の山男」