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はっけんでんだんよ

八犬伝談余

内田 魯庵

「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,945 字 · 43 页

青空文庫

こういうと偏痴気論になる。小説だもの、鱶七が弁慶の長上下で貧乏徳利をブラ下げて入鹿御殿に管を巻こうと、芝居や小説にいちいち歴史を持出すのは余程な大白痴で、『八犬伝』の鉄砲もまた問題にならない。が、ウソらしいウソは問題にならないが、ホントウらしく聞えるウソは小説だと思っても欺されるから問題になる。弁慶の七つ道具の中にピストルがあったといっても誰も問題にしないが、長禄に安房の田舎武士が鉄砲を持っていたというと、ちょっと首を傾げさせる。いわんや説話者が博覧の穿鑿好きたる馬琴であるから、眉に唾をつけながらも考えさせられる。

鉄砲は暫らくお預けとして、長禄というと太田道灌が江戸城を築いた年である。『八犬伝』には道灌は影になってるが、道灌の子の助友は度々顔を出してる。江戸は『八犬伝』の中心舞台で、信乃が生れ額蔵が育った大塚を外にしても神田とか湯嶋とか本郷とかいう地名は出るが「江戸」という地名は見えない。江戸城を匂わせるような城も見えない。両管領との大戦争に里見方は石浜、五十子、忍岡、大塚の四城を落しているが、その地理的位置が江戸城を懐わせるようなのはない。