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はっけんでんだんよ
八犬伝談余
内田 魯庵
「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,945 字 · 43 页
荘助の額蔵が処刑されようとした庚申塚の刑場も近く、信乃の母が滝の川の岩屋へ日参したという事蹟から考えても高等師範近所と判断するが当っているだろう。
ところで信乃がいよいよ明日は滸我へ旅立つという前晩、川狩へ行って蟇六の詭計に陥められて危なく川底へ沈められようとし、左母二郎に宝刀を摩替えられようとした神宮川というは古名であるか、それとも別に依拠のある仮作名であるか、一体ドコを指すのであろう。信乃が滝の川の弁天へ参詣した帰路に偶然邂逅ったように趣向したというのだから、滝の川近くでなければならないので、多分荒川の小台の渡し近辺であろう。仮にそう定めて置いて、大塚から点燈頃にテクテク荒川くんだりまで出掛け、水の中で命のやりとりの大芝居をして帰ったのが亥の刻過ぎたというから十時である。往返をマラソンでヘビーを掛け、水中の実演を余程高速度で埒を明けなければとても十時には帰って来られない。が、荒川より近くには神宮川のような大きな川はない。
道節が火定に入った円塚山というは名称の類似から本郷の丸山だろうともいうし、大学の構内の御殿の辺だろうという臆説もある。ドッチにしてももとが小説だから勝手な臆測が許されるが、左母二郎が浪路を誘拐して駕籠を飛ばして来たは大塚から真直ぐに小石川の通りを富坂へ出て菊坂あたりから板橋街道へ出