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やおちょうについて

八百長について

山本 周五郎

「東京新聞」1959(昭和34)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,589 字 · 4 页

青空文庫

かといってもちろん、私はインチキや八百長を礼賛するものではありません。そんなことのないほうがよりよいのはたしかであるが、勝負ごとはいわば人生のぜいたくであって、生産とか、建設とか、開拓などという活動とは対象的な、有閑優雅なあそびではありませんか。

九人がかりでたった一人の打者をいじめる野球にさえ「八百長だ」などという声があらわれる。いやはや、と言うほかはないですな。私は外国へはゆかないから、読んだり聞いたりするだけであるが、勝負ごとはおおようにたのしみ、交友をあたため、社交を飾るというふうに考えられているようである。

わが国では専門家の眼力(がんりきと読んで下さい)が発達した結果、いたるところに「八百長」が指摘され、そのためにどこかの競輪場などで、錦の御旗をひるがえしたうえ、弁当代をせしめるなどという、およそギャンブルの概念に背馳(はいち)するもう動が起るのである。

まず勝負ごとは「勝負をたのしんで下さい」といいたい。ギャンブルに関する限り、啓発はまったく無用である。それはなんの役にも立たないし、いたずらに観衆の興をそぎ、興奮に水をさすだけだからであります。