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ろくがつ
六月
相馬 泰三
「早稲田文学」1913(大正2)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页
まあ、なんと言ったらいいだろう、そうだ、自分の身体がなんのこともなくついばらばらに壊れてゆくような気持であった。身を縮めて、一生懸命に抱きしめていても、いつか自分の力の方が敗けてゆくような――目が覚めた時、彼は自分がおびただしい悪寒に襲われてがたがた慄えているのを知った。なんだかそこいらが湿っぽく濡れている。からだのどこかが麻痺れて知覚がない。白い、濃淡のない、おっぴろがった電燈の光が、眼の玉を内部へ押し込めるように強く目に映じた。自分のいるところより一段高いところに、白い詰襟の制服をつけた警官が二三人卓に向って坐っているのがちらと目に入った。
(おや、ここは警察署だな)と彼は思った。すべてのものが静かに息を潜めて、そしてあたりの空気が元気なく疲れて冷え冷えしている様子が、夜のすでに深く更けていることを物語っていた。――すべてこれらのことが一瞬の閃きの間であった。思い設けないことに対する一種の驚愕が、今まで腰かけていたべンチの上から彼を弾き下ろした。身に巻きつけられてあった鼠色毛布のぼろきれがぱさぱさと身体を離れて床に落ちた。で、彼はまる裸になった。