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ろくがつ

六月

相馬 泰三

「早稲田文学」1913(大正2)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页

青空文庫

手にさげて来た風呂敷包みを片隅に置いてしばしぼんやり立っていたが、取付き場がなく、味気なくてしようがないので、押入れから布団を引きずり出してその中へもぐり込んだ。すると今まで外面へ張りつめていた気がゆるんだとでも言うのか、急にあるえたいのしれない烈しい寂寞と哀愁とが大颶風のように彼に迫って来た。熱い涙がつき走るように彼の目から流れ出た。彼はこらえることが出来ないで身を慄わして慟哭した。

何かしら自分というものが限りなく不憫でならなかったのだ。自分をかばっていてくれるものが、この広い広い世界に誰一人ないように思われて淋しかったのである。ほんとに自分の命だって自分がちょっとでも油断しようものなら、どんなことになってしまうかわからないように思われて怖ろしく、そして哀れでならなかった。

口を塞がれるような、今にも窒息してしまいそうな苦しみの記憶が時々彼の頭に浮んで来た。目をつぶると、丸裸の身体にぼろ毛布をまきつけられて、警察の留置所に入れられて横たわっていた、ついさっきまでの自分のあさましい、みじめな姿がまざまざと見えてくる。小さくなって警官にいろいろ訊きただされていた、おどおどした自分を思い出すと、何だか羞かしいような、また何物かからひどく卑しめられてるような、そしてまた何物かに対して大変申しわけがないような