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ろくがつ
六月
相馬 泰三
「早稲田文学」1913(大正2)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页
壁、窓、カーテン、天井、天井からぶら下がっている幾つかの電燈、隅々の戸棚、蓋のしてある暖炉、大きな八角時計、晴雨計、寒暖計、掲示板、――壁にはところどころに何者の趣味だか、いや何の意味だか呉服店だのビール会社だのの広告絵、大相撲の番附などが麗々しく貼られてある。と思うと、万国地図、日本地図、東京地図などが不秩序にあちらに一ツこちらに一ツばらばらに懸けられてある。また、何者の筆になったか判明しない怪しげな骨董絵の軸などもさがっている。中にはつい四五日前に新たに懸けたのもあれば、また十五年もそれよりも前からそこにぶら下げてあるようなのもあった。彼はそれらを一ツ残さず隅から順々に眺めて行った。しかし何一ツとして彼の心をひくものはなかった。それらのものからは何らの親しみも、何らのゆかしさも感ずることができなかった。
次ぎに彼はその眼を、順よく向い合わされて並んでいる幾列かの卓に転じた。各列の一番むこうのはずれに各その面の主任がおり、それから主任助手、主任次席、以下△△係、△△係といった風にちゃんと各自その定められた席について各自割り当てられた仕事をしている。