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ろくがつ
六月
相馬 泰三
「早稲田文学」1913(大正2)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页
淋しいような、やきもきとそそられるような気がした。するとついさっきまで、お伽噺の筋を一生懸命に考えていたことなどがあまりに意気地なく、あまりに馬鹿馬鹿しいような気がした。何という廻りくどいことだ、……いや、俺は一体何歳だというのだ。二十六七と言えば、花ならば今が満開だ。まったく、満開がいつまでも続くものか、「青年は人生の美しき口絵!」こんなことを誰やらが言っている。「美しき口絵」そのとおり、そのとおり。……しかるに
(おい、曽根君、当年二十七歳の美男子、君のその縮こまり方と来たらどうだい。棒切れに突かれた蝸牛みたいに恐ろしく引込み思案を初めたその君の心は、……お伽噺とはほんとに好い思いつきだよ。ふ、ふ、川へ落ちたぐらいが何だね、借金が何だね、憂き世の波におじ気がつきましたかね。……おとなしいお子供さん、そのうちにどこかの小父さんが讃めてくれるだろう。……)また例のやつが彼の腹の中で初まった。すると急に元気づいて来て、口を尖らし、口笛で何かでたらめのマーチをやり出したりした。しばらくすると彼は人通りのないような横町へちょっとそれて懐中から金入れをとり出し、その中をしらべてみた。