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ろくがつ

六月

相馬 泰三

「早稲田文学」1913(大正2)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页

青空文庫

と答えた。

その言い方が不明瞭だったので警官は敏活にこれを聞きとがめた。

「新聞だと? 配達夫か」

「新聞記者です」

彼はこう言わなければならなかった。

そこでその新聞社の名を訊くと、もうあとは何も別に詳しいことを尋ねようともしなかった。小半時間ばかりして新聞社から着物を持って人が来たので、彼はその部屋から出されて応接室へ移された。そこでは給仕がお茶を持って来てくれたりした。湯気のたちのぼる熱いお茶をすすりながら、彼は初めてほっと大きな吐息をした。閑な警官が二三人そこへ来て笑いながらいろいろと昨夜の話しをして聞かせた。それによると、何でもまだ十時をちょっと過ぎたばかりぐらいの時刻だったそうだ。落ちたというのはこの警察署のすぐわきを流れている溝川で、彼の落ち込むところを一人の警官がちょうど見ていたということだ。そこに川なんかのあるのにてんで気がつかずにいたものらしく、道が曲っているのを真直ぐに歩るいて来て、大手を振りながら落っこちてしまった。……

それから一人の警官は、わざわざ彼を窓のところまで引張って来て、下の方を指差しながら

「それ、その川だ。岸の石垣の高さがあれでも一丈もあるだろうよ、……梯子を下すやら、それは騒いだよ。