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きょうやくかいてんだん

共軛回転弾

海野 十三

――金博士シリーズ・11――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,359 字 · 21 页

青空文庫

「あらっ、先生のお好きな燻製でございますよ」

鉛華は博士の答に、意外な面持。うしろではルスとベラントが心配そうな顔を見合わせる。

「燻製はもうたくさんじゃというのに。さっき、いやというほどカンガルーの燻製を喰ったよ。腹一杯になった」

「まあ、どうして召上ったのですか」

「泥棒がここへ持って来て、わしに喰えといった」

「泥棒が……」

「そうだよ。チーア卿といってな、チャーチル奴の特使じゃよ。モヒ中毒を装った苦が苦がしい男じゃ」

「それが泥棒でございますか」

「大泥棒じゃ。あれを見よ。わしの大金庫から新兵器の設計書袋を二抱えも持って逃げよった。怪しからん奴じゃ」

「まあ、それで先生は、その泥棒をお捕えにはなりませんでしたの」

驚きは鉛華よりも、後に控えたルーズベルトの特使ルス嬢とベラントの胸の中だった。折角来たが、チャーチルの特使に一足お先へやられてしまったとあっては、甚だ拙い。

「あの泥棒は逃がしてやった。それにわしはすっかり腹がくちくなって、指一本動かすのも大儀じゃったからなあ」

「まあ、いつもの先生なら、決してお逃がしになるのではありませんでしたのに……」

ルス嬢はこのときそっと鉛華の袖を引いた。