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にとせろうじん

再度生老人

佐左木 俊郎

「宇宙」1928(昭和3)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,770 字 · 14 页

青空文庫

和尚は来るたびごとに、再度生老人のことを悪く言った。

「あの爺は、再度生老人だなんて、名ばかり偉くて、何もろくなものは描けねえようでがすな。どこから頼まれでも、俺が頼んでも、さっぱり描きいんからな。気が向かねえ、気が向かねえって描きいんでがすからな。」

「そんなごどもがすめえぞ。あの爺様は、――金のことを考えたのでは、ろくな絵は描けねえ。貧乏は苦にならねえ。いいものを描きたいのじゃ――って言ってしたがらね。」

私の父は言った。

「なあに、ろくなもの描けるもんでがすか。あの爺は、怠けものでがす。気が向きそうもがいんな。なあに、今に、追っ払ってやりますべは……」

和尚は、癪に障るらしい口吻をもらした。

和尚の話によると、和尚は絶えず描くことをすすめているらしかったが、再度生老人は、まるで和尚の言うことなどは問題にしなかった。貧乏したって、寒くたって、煙草が吸えなくたって、俺の勝手じゃないかと老人は言っていたそうだった。

「煙草が吸いたくって、吸いたくって、我慢が出来なくなったら、そうしたら、煙草銭を稼ぐ積もりで描くかも知れねえ。しかし、さあ達磨を描け、花鳥を描け、虎を描けと、居催促をされるんじゃ、わしは、いよいよ食えなくなっても書かんのじゃ。