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かんこんそうさいはかせ

冠婚葬祭博士

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页

青空文庫

正直者の一生

二日続けて出頭して宜しくお願い申上げたのだから、団さんも奥さんも、よく/\嫁を貰いたい男と思ったに相違ない。

正直者の一生

爾来三年、清水君と大谷君は僕の親友だ。僕の為めに二人が結びついた形もある。僕は二人の関係から団さんの夫婦にも特別贔負になっている。真に親切な人達だ。少時御無沙汰をすると、団さんが食堂で捉まえて、今晩話しに来いと指定する。

「お忙しいでしょう?」

「いや、構わん。今晩は家内も明けてあるんだ」

「それじゃお邪魔を致します」

団さんは会社の冠婚葬祭を一手で引受けている。仲人は年に十件ぐらいだが、不幸の方は月に幾つも重なることがある。社員そのものは頑健に勤めていても、家族に事故が多い。団さんは形式丈けの葬儀委員長でない。息子と娘を失っているから、子供の不幸に同情が深い。

「お察し申上げますよ。是非もない世の中です」

と言って、団さんが手を合せると、遺族は泣き出す。団さんも泣く。然ういう場合、それ以上の慰めはないのだ。

僕は一時初めの中、団さんを軽視したことがあった。好い年をして課長にもなれず、彼方此方へ行って、ペコ/\している。然う思ったら、尊敬する気になれなかった。