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ふゆのちょう

冬のちょう

小川 未明

「民政」1934(昭和9)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,971 字 · 6 页

青空文庫

すがすがしい天気で、青々と大空は晴れていましたが、その奥底に、光った冷たい目がじっと地上をのぞいているような日でした。

美しい女ちょうは、自分の卵をどこに産んだらいいかと惑っているふうでありました。なるたけ暖かな、安全な場所を探していたのでした。

もう、季節は秋の半ばだったからです。その卵が孵化して一ぴきの虫となって、体に自分のような美しい羽がはえて自由にあたりを飛べるようになるには、かなりの日数がなければならぬからでした。

「ああ、かわいそうに、こんな時分に生まれてこなければよかったのに……。」といって、女ちょうはまだ見ない子供のことを憂えたのでありました。

彼女は、さらに、そのような心配をしなくてはならぬ、自分をも不幸に考えたのでありました。

「なぜ、私は、もっと日の長い、そしていろいろの花がたくさんに咲いている時分に、この世の中へ生まれてこなかったのだろう。」と、思わずにいられなかったのです。

どこか、庭の捨て石の下からはい出てきた、がまがえるが、日あたりのいい、土手の草の上に控えて、哲学者然と瞑想にふけっていましたが、たまたま頭が上へ飛んできた、女ちょうのひとりごとをきくと、目をぱっちりと開けて、大きな口で話しかけました。