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ふゆのほうりゅうじもうで

冬の法隆寺詣で

正宗 白鳥

「読売新聞」1958(昭和33)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,358 字 · 5 页

青空文庫

鑑真和上の叙述は案外簡単で、盲目のまま渡海の大難事を決行した心事などちっとも分らず、後日のカトリック僧徒の渡日同様、私などの窺い知らない神奥な宗教信念を感得しているとも思われない。

私の癖になっている年々の法隆寺行は、無意味であるが、人間が無意味なことを行うところに意味がある。

私は、法隆寺参拝のあとで、わざわざ伊勢の松阪の有名な牛肉屋へ行って、牛肉を二三切れ食べた。私は青年時代からのビフテキ愛好者なので、世間の噂にかぶれて、日本一の牛肉を食べて見たいと思ったためである。宗教心からの法隆寺行、食慾からの松阪行。意味深遠らしくて、顧みると実は何でもないのだ。弱い私の胃は、三切れか四切れの牛肉を収容し得たのに過ぎなかった。