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とううん
凍雲
矢田 津世子
「婦人文芸」1934(昭和9)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,121 字 · 29 页
此処で休んでいるのは、ひと目で在郷者とさえ分るくらいであった。
よく、この松の木に馬をつないで、一ぷくつけている馬方を見かけることがある。そんな時の、町の人たちの顔には、一種よそよそしいような、蔑むような、優越感を匂わせたような、複雑な表情が掠める。
松の木は節くれだって、経てきた旧い年々の風雪を染みこませて、昔ながらに七曲りの辻に立っている。
十一月に入って、ちらほら降り出す雪が積りはじめ、正月へかかる頃は、見渡すかぎり白ひといろの世界にかわる。二月の初め頃には、道は、屋根から行き来できるほどの高さになり、着ぶくれて丸っこくなった子供たちは、藁沓にぼっちをかむって、屋根から屋根へ、ひょいひょいと渡りながら、七曲りの松の木が小っちゃくなった、と燥ぎ立てる。
町の屋根からは、この松の木が、雪に埋れて、ほんとうに背丈が低く、ちびて見えるのだった。
この町には、七の日毎に市が立つ。老い萎えている町の呼吸が、この市日で、微かに保たれているようである。「五城目の市日」といえば、昔から、この近郷の人々が寄り集う慣わしであった。
町の目抜き通りの上町下町をとおして、両側に、物売りが並ぶ。