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しょじょさくよりけっこんまで

処女作より結婚まで

宮本 百合子

「婦人倶楽部」1924(大正13)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 752 字 · 2 页

青空文庫

人並みの苦心をすることは決して苦心とはいえないでしょう。というのは、成功と失敗とに拘わらず、努力に就ての或る標準が予想されていて、その標準以上の努力をした場合でなければ、苦心といえないものだと思うからで御座います。ある一定の効果を挙げる為に当然支払わねばならぬというだけのものを支払った事は、それは敢て苦心という事が出来ないものだと思われます。

例えばキリストを主題とした小説を書こうとしますと、それは結果の上には何も現わさない場合でも、準備として、その土地、年代、土地の風俗、特別に行う祭事などを研究しなければなりません。けれども、その位の努力は誰でも払うものだときまっているとすれば、それは取立て苦心とは云えないものだと思います。その上、苦心などという事は、全く主観的のものであって、生れつき文芸好きな私自身は、創作には準備の場合にも推敲の場合にも、苦しいどころか愉快を感じて居りますので、其意味に於て私は、特別に苦心をしたという経験がないので御座います。

一番嬉しかったというのは、矢張り、初めて自分の書いたものが活字になった時で作の善い悪いは別として、理由のない嬉しさを感じました。