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れつのこころ

列のこころ

宮本 百合子

「大陸」1940(昭和15)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,148 字 · 11 页

青空文庫

パーマネントの問題は一度おこって消えて、最近では女がそんな髪をしてはならないことにきまった。女の便利不便利ということからではなくて、それを見る男の人々の感情へのはばかりが理由となっている。女とすれば、いやな気持をさせたいとは思わないからやめるにちがいない。でも、列というものがその力でどこかをみっしみっしと軋らせはじめると、一番弱々しい箇所に向ってのしかかるのは列の力学とでもいうものだろうか。昔から女は、外で亭主がむしゃくしゃしてきた鬱憤をはらす対象として躾けられて来た。女の生活の眼もいくらかは開いて、そのような列の力学をも、歴史の経てゆく容相の一つとして今は理解してゆくのかもしれない。

野菜ものの価が下るというよろこばしい知らせは、市場に列をなしている主婦の胸をくつろがせた。しかし、下ると同時に野菜の出まわりは、平時の四割に減ってしまった。列に立つ女たちは、自分たちの列のどの場所でも、そのようにして素ばしこく姿をくらます野菜を堰きとめる可能はもっていない。

これから、時代は益々列をつくる方向に向っていると云えるだろう。一つの国の人間が先ず列をつくることを教えられ、やがて自分たちで列をつくるようになり、追々自分たちの生活の実際の向上のために列を組むように成長してゆく過程は、実に多岐であり波瀾重畳であると