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れつのこころ
列のこころ
宮本 百合子
「大陸」1940(昭和15)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,148 字 · 11 页
仲仕がトラックにのる仕事だと大変よろこぶという実際の例がある。トラックに乗っている間はともかく腹が空かないから。
おなかが空いたときの顔は誰しも些か険相で、男のひとたちは女よりもその表情が率直だと思う。おなかが空いた落付かない顔は、ああやって密集して順番を待っている人々の表情のなかで、更に一層焦立たしいような、焦立たしさを持ってゆく当途のないために猶更焦立たしいというようなかげを帯びて眉のあたりや口元に漂っている。タバコを吸いながら待っているというようなものが殆どないことも目につくことである。素破と云えばすぐ辷り込めるよう重心を片足において目をくばって待機しているのである。
そうやって待っているのが男ばかりなのも一つの光景であると思う。屈強な男ばかりがつめかけるのである。
女はつつましくうちからもって来るお弁当を使うのだろう。毎日のことで格別そちらの群集に目を向けるでもなく、若い女事務員が小さい組になって散歩している。水色の交織の事務服が大きすぎるので深い肩揚げのついたのを着た娘さんたちも歩いている。
そこから、次の用件で芝の方へ行ったら、増上寺前のプールの外の日除けの下に少年少女の密集があった。