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れつのこころ
列のこころ
宮本 百合子
「大陸」1940(昭和15)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,148 字 · 11 页
皮膚や体つきが生活を語っているような人々が集る。荷物もその陰翳にふさわしくて、たとえば真新しいバスケットを提げていれば、その真新しさに或る悲しさがあるような雰囲気である。そのような上野独特の旅客が山下まで溢れた中には、旧盆に故郷へかえる男女の産業戦士が大部分を占めていることも新聞に報告された。
同じ頃にやはり新聞が、青少年男女の産業戦士の病気になる率が急騰していることを報じていたことは、その上野駅頭の大群集の写真との対照で、今なお生々しく私たちの感銘に刻まれていると思う。去年の春ごろ、同じような荷物に漠然とした人生への希望をも持ち添えて職業紹介所の募集に応じて上京した少年少女や青年たちは、去年にくらべると非常な率でこの一年間に病に犯されている。
切符を買うために、上野駅を溢れた列は永藤のところまでものびたのであったが、その中に何百人が、もう再び東京にはかえらない体となって交っていたことだろう。田舎から出たばかりの清浄な肉体は、清潔であるが故に悪条件の中ではもろくて、これらの産業戦士たちが第一に犯かされるのが結核、次は脚気、つづいて視力障碍である。