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しょか(せんきゅうひゃくにじゅうにねん)
初夏(一九二二年)
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,549 字 · 8 页
此を、深い考えとして、心に持つ。
考 (二)
創作をするにも
種々な動機が(内的に)あると思う。
或人はイブセンの如く
燃え立つ自己の正義感と理想とに
写る人間の愚悪に忍びず
詰問から、書く人がある。
或者は、ゲーテの如く(恐らく)
思索の横溢から
或は又、外界と調和し得ぬ
孤独な魂の 唯一の表現として
人類は、多くの芸術を献げられて来た。
さて、
私は何で、一つの小説を書くのだろう、
勿論、共通な、人間の、真に触れたい希望からだ。
然し、憤ってではなく、憂えてではなく
すべてのものを愛して――i・e、
子供のように
種々なものを、よろこび、好奇を持ち
手にふれ、ほぐし、あらためて
又組たてたくて、書くのではないか。
一つ一つ
新らしい現象を究める毎に
私は生命の知識が
それ丈拡がった歓びを 感じずには居られないのだ。
*
六月十六日
落付いて、小説を書くようになったら
又私の処から
詩らしい言葉の調子が逃げ去った。
詩は波、揺らぐ日かげ
理性は潜んで、静かにとける情操から
陽炎のように思いが きで燃え立つのだ。
けれども、小説は、全く一面の努力
頭を整え、思いをただし、
運命の神のように
我を失わず、描く人間の運命を支配しなければならないのだ。