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はつたびのだいぼさつれんれい

初旅の大菩薩連嶺

木暮 理太郎

「霧の旅」1933(昭和8)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,508 字 · 19 页

青空文庫

ここで中食して一時間休憩したのはよいが、忘れるといけないからと殊更に注意して、手近の灌木の上に載せて置いた武田君持参の唯一の提灯を、其儘むざと忘れてしまったのは、失錯続きの此行の最後を飾る為の天意であったと諦めても、諦め切れない程の困難に遭おうなどとは誰が知ろう。

午後十二時半に北に向って下り始める。倒木も少しはあるが、依然として切明けが続いているので、さしたる困難はない。木立の中を下って笹原に出で、又笹原を上り、同じようにして三の隆起を踰えると、大菩薩岳を除いて此の連山の最高点である二〇一四米の三角点に達した。午後一時五分である。頂上は少しは岩石も露出し、東に向って岩の痩尾根を派出している。三角点の附近にはビール瓶の破片が散乱していたり、水を入れて来たらしい硝子瓶などが置いてあった。自分等が想像していたよりも登山者があるらしい。勿論これが総て普通の登山者であるかどうか疑問ではあるが。この頂上では秩父の飛竜から雲取、入奥、多摩川流域の御前、大岳、陣場、景信などが皆一眸の中に集った。

「●大菩薩連嶺の南半(佐野峠より)」のキャプション付きの写真

●大菩薩連嶺の南半(佐野峠より)