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こくこく
刻々
宮本 百合子
「中央公論」1951(昭和26)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页
白鉢巻姿の、決意に燃える婦人争議員の写真が目にのこっている。
このストライキが起る前、地下鉄の従業員達は出征する従業員を品川駅へ見送りにやらされた。が、その連中は会社側が渡した日の丸の旗を振ることを大衆的に拒絶し、プラットフォームで戦争反対の演説をやって、メーデー歌を合唱したという話がある。又、ストライキに入った第一日に従業員出身の現役兵が籠城中の争議団員のところへやって来て、一緒に「資本家と闘いたい」と申し出た。ストライキ委員会は、それだけの熱意で兵営内闘争をやってくれと云い、兵士と従業員は革命的挨拶を交して別れたということも聞いた。
地下鉄、出札と聞いた瞬間、自分は一種の重圧をもって稲妻のようにそれらの闘争を思い起した。あのような顕著なストライキ後、敵は何かの形で、経営内を荒すであろう。この内気そうなぽっちゃりした娘さんと敵の襲撃とはどのような関係にあるのだろう。……
黙っていろいろ考えていると、今度は娘さんの方から口を利いた。
「……警視庁からはいつも何時頃来ますの?」
自分は、それは全然むこうの風次第だと答えた。現に自分などは一ヵ月近く留置場にぶち込まれているが、警視庁からはその間三四度来たか来ないかだ。