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こくこく
刻々
宮本 百合子
「中央公論」1951(昭和26)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页
「あたし、世の中にこういうとこの人たちぐらいいやな男ってないわ」
横坐りをしている若い女給が伊達巻をしめ直しながら溜息をついた。
「刑事なんぞここじゃ横柄な顔してるけど、お店へああいう人が来ると、まったく泣けるわ。そりゃねちねちしてしつっこいのよ。つんつんすりゃ仇されるしさ、うっかりサービスすりゃエロだってひっかけるしさ。――お店だってよくかり倒されんのヨ」
引っぱられて来るのは女給が一番多く、そのほかでも、話を聞いて見ると八割までは、媒合、売淫、堕胎など、資本主義社会における女の特殊な不幸を反映しているのであった。
呼び出されて、いつも通り二階へ行くものと思っていたら昇り口を通りすぎ、主任が先へ歩きながら、
「おっかさんが見えてるんだが……」
立ち止って、グルリと平手で五分苅頭を撫で、
「――会いますか」
厭わしさと期待の混り合った感情が自分を包んだ。
「会いましょう」
コンクリートの渡りを越え、警察の表建物に入ると、制服巡査が並んで、市民の為の事務をとっている。その横に署長室がある。
ドアをあけると、署長の大テーブルのこっち側の椅子に母親が腰かけている。