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ぜんきてんまやけ
前記天満焼
国枝 史郎
「文芸倶楽部」1927(昭和2)年6月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,568 字 · 98 页
その送人を途中に擁し、宇和島に殺させ奪い取ろうと、そう目論んでの仕事だったのに、あいつの腕が利き過ぎていたので、平野屋の主人に逆に雇われ……」
「あいつが高価の品物を保護して、江戸入りすることになったとは、面白くない運命で」
「面白くない運命といえば、源三郎の運命も……金太々々ちょっと来い」
「へい」と近寄って来た乾兒の一人へ、又大学は囁いた。
「へえ、それでは加賀屋の倅を、加賀屋の金蔵へ送り込むんで」
「うん。……さあさあみんな行け」
一同の悪漢どもが立ち去って、一人になると大学は榻の一つへ腰かけた。
「この考えは素晴らしいぞ」
独り言を云いながら考え出した。
すると、その時扉をあけて、スッと入って来た女があった。
「大変な芝居をなさいましたねえ」
女役者の扇女である。
「ほほうお前か、見ていたか。舞台の芝居より凄かろう」
「血糊と異って流されたは、本当の血でございましたからね」
「どうだ扇女、物は相談、凄味に惚れちゃアくれまいかな」
「そうですねえ、考えましょうよ、一つじっくりと考えましょうよ」
「そのじっくりだが、気に入らないな。それにさ恋というものは、考えてやらかすものではない。