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ぜんきてんまやけ

前記天満焼

国枝 史郎

「文芸倶楽部」1927(昭和2)年6月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,568 字 · 98 页

青空文庫

壁の外側では宇和島鉄之進が、抜いた大刀で待ち構えたが、すぐに狂信者に包まれた。

「おお汝は宇和島鉄之進!」

こう喚いたは市郎右衛門であった。

「うむ、柏屋の番頭か、その実お久美の一味だな。……いかにも宇和島鉄之進だ。……ただし本名は宇津木矩之丞! すなわち大塩中斎先生の門下! これ!」と云うとヌッと出た。

「中斎先生に退治られた、京都の妖巫貢の姥、その高足のお久美という女、網の目を逃がれて行方が不明い。その後も中斎先生には、心にかけられ居られたが、江戸にいようとは思わなかったぞ。見現わしたからにはようしゃはしない。先生に代わってこの矩之丞、破邪の剣を加えてやる。……一度にかかれ! 屯ろしてかかれ! 先ず汝から! 来い市郎右衛門!」

技倆は十分、覇気は満腹、しかも怒りを加えている。

飛び込みざまに横へ薙ぎ、市郎右衛門の胴を割り付けた。

飛び返ると背後に土塀がある。それへ背中を食っ付けたが、

「一人退治た、次は誰だ! お久美お久美、今度は其方だ!」

飛び込もうとするのを見て取るや、五六人信徒が中をへだてた。

「それでも感心、教主を守るか。充分に守れ、充分に切る。