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けんのよんくんし
剣の四君子
吉川 英治
03 林崎甚助
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 页
二
この地方一帯は、足利家の管領斯波氏のわかれ最上一族の勢力圏内であった。甚助の父も、最上家の臣だった。
上杉謙信の越後本庄から最上川を溯れば、最上領東根の砦町、また、黒伏嶽や高倉の山道を越えれば、一路伊達家の仙台に通じる。武強の隣藩と境を接して、連年、ここにも戦乱は絶えなかった。
甚助は信じていた。
「わしの父者人は、戦で死んだのだ」
それは、父なき少年の、せめてもの誇りでもあった。
ところが或る時、楯岡の砦町から部落へ来た馬商人の曳いて来た馬へ、甚助が他の少年たちと共に、悪戯すると、その中の一人の馬商人が、拳を振上げて、逃げおくれた甚助のうしろからこう呶鳴った。
「この童めッ。そげな悪性な真似しさらすと、汝れが父者のように、汝れも今に、闇討ち食ってくたばりさらすぞ」
その声は、甚助の耳より魂をつき破った。甚助は、色あおざめて逃げて来た。それからもう他の子と遊ばなくなった。
二
長柄という武器は、戦時の用具である。平時の刀では短きに過ぎるので、いざという場合、常の刀へ、常用の柄より寸法の長い特殊な柄をすげ替えて、これを引っ提げ持ちにして、戦場へ働きに出るのである。