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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

板塀が高くかかってい、その上に植込みの槇や朴が、葉を茂らせてかかってい、その葉がこれも月の光に燻銀のように薄光っていた。

「表門の方へ廻って見ましょう」

こう云って要介が先に立ち、二三間歩みを運んだ時、消魂しい叫声が邸内から聞こえ、突然横手の木戸が開き、人影が道へ躍り出た。

一人の武士が白刃を下げ、空いている片手に一人の女を、横抱きにして引っ抱えてい、それを追ってもう一人の武士が、これも白刃を提げて、跣足のまま追って出て来た。

「汝! ……待て! ……極重悪人」

追って出た若い武士の叫びであった。

「お兄様! ……お兄様!」

抱えられている娘は悲鳴をあげた。

「陣十郎だ!」とその瞬間、要介は叫んで足を返した。

娘を抱えている武士が紛う方もない、水品陣十郎であるからであった。

陣十郎は躊躇したらしく、一瞬間立ち止まった。

背後から若い武士が追って来る、行手には二人の武士がいる。何方へ走ろうかと躊躇したらしい。

そこへ追いついた若い武士は、

「父上の敵、くたばれ悪漢!」

声諸共切り込んだ。

「切れ――ッ」と差し出したのは娘の躰!

「あッ」とばかりあやうくも、白刃を三寸の宙で止め。