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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

「お兄様妾も是非にお供を」

いよいよ旅へ出るという間際になって、こう澄江が云い出した。

「お父上が陣十郎に討たれました。その原因の一半は、妾にあるのでござりますから」

こう澄江は主張するのであった。

「女を連れての敵討の旅、それはなるまい」と主水は拒んだ。

「主君への聞こえ、藩中の思惑、柔弱らしくて心苦しい」

こう云って主水は承知しなかった。

「宮城野、しのぶは女ばかり、姉妹二人で父の敵を、討ち取ったではござりませぬか」

2

だから私達兄妹二人で、父の敵を討ち取ったところで、不思議はないというのであった。

そういう澄江の心の中には、自分達二人は許婚である、良人となるべき主水が旅へ出、敵を捜索するとなれば、幾年かかるかわからない、その間寂しい家に籠って、イライラして帰りを待っているより、自分も未熟とはいいながら、田宮流小太刀の教授を受け、その方では目録を取っている、まんざら迷惑の足手まといとはなるまい、その上殺されたお父様は、義理深い養父であり、かつは舅父となる人であった、実の父親へ尽くすよりも、もっと尽くさなければならないお方だ、そのお方が一半は妾のために、あのような御最期をお遂げになった、どうでも自分としては敵を討ちたい、それにお母様は数年前に死なれ、残って孝養する必要はない、かたがたどうでも主水と一緒に、旅へ