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げきだん「わらうようま」

劇団「笑う妖魔」

山本 周五郎

「少年少女譚海」1938(昭和13)年夏期増刊号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,705 字 · 18 页

青空文庫

屍は語る

「こ、こ、――ここに、……ここを、――」

胸を指さしながら、それまで云うとがくり前へのめって絶命した。――五郎は道化服をびりびりと引裂いた。ここに! と指さしたからには、例の秘密を持っているに違いない。しかし何も出てこなかった。シャツの下まで調べても、体中をすっかり調べても、紙一枚出てこないのであった。

――どうしたんだ。

五郎は気も狂わんばかりだった。兄は死んだ、間違いか故意か? 空弾の筈の拳銃に実弾が入っていたのである。そして秘密を握ったまま射殺されて了ったのだ。然も証拠の品を持っていないとすれば、兄はただ犬死をしたに過ぎないではないか。

「――ああ神さま!」

五郎は思わず慟哭した。

屍は語る

例え過失にもせよ、明かに殺人事件だから、道化の死体とともに、劇団「笑う妖魔」一座の者は、その場から警視庁へ連行された。

取調べは簡単だった。舞台用の拳銃に実弾が入っていたのである。しかもその拳銃に空弾を填めるのは道化の役目だった。(こうした場合には、射たれる役が弾丸込めをするのが例である。つまり自分が射たれる役だから間違える筈はないという意味で)――してみると、射った男には些かも罪はないことになる。