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かご
加護
宮本 百合子
「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页
それを思い出すと、流石の彼女も再び神の怒と恩寵とを説くほど厚顔にはなれない。お恵さんが行違いを二人の間だけのこととして、誰にも洩さず、自分の不注意をかばっていてくれることは、お幾にとって、譬(たと)えるもののない恩恵であったのである。
こういういきさつを経て、二人の友情はまた元通り濃(こまや)かなものになった。が一方お幾の信仰談は、傍から想像もつかない位しおらしい遠慮で憚られているうちに、お恵さんには更に第二の不幸が襲って来た。
せっかく十まで育て上げた唯一人の男の子が、急性肺炎でたった三日入院したばかりであえなく死んでしまったのである。
その時、お幾の尽した親切というものは、恐らく親身の姉もそれには及ぶまいと思われるほどのものであった。
実の兄はありながら、寡婦になったお恵さんを厄介者扱いにして、悲しみの最中に、一遍の形式的な悔みを述べに来たきり、後は振向こうともしない冷酷さに義憤を発したお幾は、泊りがけで気の毒なお恵さんの片腕になった。
物に熱中し易い彼女が、全心を焔のようにして掛った好意によって、お恵さんは辛くも愛子の葬儀を滞りなく済すことが出来たのである。