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かご
加護
宮本 百合子
「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页
自分が、近頃になく心持よく、若返ったように感じる通り、自然も、子供で、愉快な活力に横溢しているように思われるのである。
彼女の足は、自ら軽々と動いた。こうやって行くと、まるで、勤めで、ここまで行かなければならないという歩行ではないような気がする。焦ることもなく、思い煩うこともなく、彼女は散歩のように楽な気分で、鎮った屋敷町を進んだのである。
巡査の姿は見えない、とある交番の傍から、道幅の狭い、商売町にかかる頃、四辺の靄はもうすっかり霽(は)れ渡った。屋根の瓦や、眠りから醒めた小さい飾窓(ショーウインドー)に、チラチラと日が照る。店頭に動く小僧の姿、黒い外套に息を白く見せて行違う学生の通学姿等が、そろそろ、急しい午前七時の町筋を思わせる。
起きたばかりの文房具店の横から右に曲り、また静かな裏通りに出ると、お恵さんの足は、何時の間にか速くなって来た。天理教会の支部は、もう一つ先の角を折れた坂上にある。今迄、あまりゆっくり歩き過たという意識と、先がもう遠くはないという考えが、我知らず彼女を急き立てたのである。
お恵さんは、丁度先に行く中学生の足並に、後れまいとするような意気込みで、せっせと足を運んだ。