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すけごろうよざい
助五郎余罪
牧 逸馬
「探偵趣味」1926(大正15)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,407 字 · 15 页
それどころか、却って内心ほっとしているらしかった。別れの座なりを二つ三つ交わした後上り口まで行った助五郎は、ずかずかと引っ返して来て、何を思ったものか矢庭にお神棚の下の風呂敷を撥ね退けた。
「ほほう、お内儀、見事な羽二重が――和泉屋さんから届きやしたのう」
おろくは格子戸の方へ眼をやって、取って付けたように叫んだ。
「あれ、また俥屋の黒猫が! しいっ!」
「はっはっは」笑い声を残して助五郎はぶらりと戸外へ出た。「ははは、何もああまで誤魔化そうとするにも当るめぇに」
四
「望月の旦那ぇ」
「へぇ――おや、お見それ申しやして、へっへ、何誰さまでげしたかな」
「いや、年は老り度くねえだよ。俺はそれ、和泉屋の――」
「おっと、皆迄言わせやせん。あ、そうそう、和泉屋さんの男衆久さん――へっへ」
「その久さんでごぜえますだ」洗い晒した浴衣の襟を掻き合わせながら、又七の門を出た助五郎は足早やに下方の望月に追い着いて、
「家元さん、そこまでお供致しますべえ」
眼でも悪いのか、しょぼしょぼした目蓋を忙しなく顫わせながら、小鼓の望月は二三歩先に立って道を拾う。
「お店へはこの方が近道かね?」