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すけごろうよざい

助五郎余罪

牧 逸馬

「探偵趣味」1926(大正15)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,407 字 · 15 页

青空文庫

師匠も今年ゃ丁度だからなあに、あれで落したってわけでげしょう、なんてね、あっしぁお内儀に気休みを言って来ましたのさ」

「四二かい?」

「お手の筋でさあ。だがね、東京の真ん中でせえこう物騒な世の中になっちゃあ、大きな声じゃ言われもしねえが、ねえ、ご隠居、現内閣ももうあんまり長えこたあるめえと、こうあっしゃ白眼みますよ。いえ、まったく」

「国乱れて乱臣出ず、なかと言うてな」と老人は妙な古言を一つ引いてから、「箱根から彼方の化物が、大かたこっちへ移みかえたものじゃろうて」

「違えねえ」

坊主頭は大きく頷首いた。湯水の音が一としきり話しを消す。助五郎は軽石を探すような様子をしてふいと立ち上った。二人の遣り取りが続く。

「宵の口に町を歩いてる人間が、いきなり取って投げられるなんて――」

「まず妖怪変化の業じゃろうな」

「なにさ、それが厄でさあ。もっとも、相手は確かに人間さまだったってますがね、さて、そいつが何処のどいつだか皆目判らねえてんでげすから、世話ぁねえ」

「師匠は何かい、身に恨みでも受ける覚えがあるのかえ?」

老人はこう言いながら湯槽へ沈んだ。

「お熱かござんせんか」