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けしょうのもの

化生のもの

豊島 与志雄

「世界」1950(昭和25)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,086 字 · 27 页

青空文庫

」

美枝子は立ってゆき、間もなく、一つの封筒を持って来た。

封筒にはただ、「小泉美枝子様、必親展」とだけしてあった。

「今日の午後、宅の郵便箱にはいっておりましたの。御本人が自分で投げ込んでいったものと思われます。」

恒子は封筒を開いた。粗末な紙に几帳面な細字が竝んでいた。

御別れしなければならなくなりました。私は田舎へ引込みます。愛情にかけて、万事を御許し下さい。

詳しい御話を承わってから、私はHを憎みました。校舎増築について前からHを知っていただけに、猶更、憎悪の念が深まりました。あなたは一笑に附しておいでになりましたが、噂話其他により、またS夫人の仲介により、世間的にあなたの顔へ泥を塗ったのは、みなHが原因です。

あなたが私の頬を打たれた真意はどこにあったのでしょうか。あなた自身の自己解放の契機と、私は理解します。然しそればかりではなく、Hへの復讐、ひいては男性一般への復讐も、交っていたに違いありません。

板倉家の観菊の会へあなたがおいでになることを、私は知っていました。それは何でもありません。然し、Hも行くことを私は偶然知り、憤慨しました。