轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きたのふゆ

北の冬

小川 未明

「新小説」1908(明治41)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,166 字 · 11 页

青空文庫

その時私の母は四十幾つであった。脊の低い痩た人柄であった。私は未に当時のあたりの傷しい景色が身に浸みていて忘れられない。

何んでも暮方の天気が非常に寒かった。西の空の、黄色い雲はいつしか消えて、鋸の歯のようにぎくぎくした形をした山々は地球の上にしがみついて黒くなって見えた。――二人は吹雪の来ない間に湯に入って帰ろうと急いだ。帰りには暗くなると、道が分らないからというので、母が小さな提燈を吊下げて来たが、それさえ吹雪が起れば、あの橋のあたりは、全く道が消えて方角が分らない。それに雪に隠れた深い河もあるので、早く行って帰ろうと急いだ。この時も尚お、ど、ど、ど――という波の音が遥かに微かに聞えたのである。先刻の行者は、あの波の音の聞える、浜辺の村の方から来たようだ。あの男の足跡らしい、草鞋の痕が処々についていた。稀には深く落ち込んでいた処がある。……私は、ああ、あの暗い、波の音の聞える今町の方からあの行者は歩いて来て、今晩何処の村へ泊る考えであろうかと母に聞いて見た。

「さ、新井か関山の辺り(我村から三里四里先)へ泊るのだろう。」と答えた。

それから、暫くは二人は黙って道を歩いた。